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東京高等裁判所 平成3年(行ケ)159号 判決 1993年11月30日

大阪市中央区船越町一丁目4番7号

原告

島田商事株式会社

代表者代表取締役

島田行雄

訴訟代理人弁理士

小谷悦司

広島県芦品郡新市町大字戸手2382番地の6

被告

株式会社ミツボシコーポレーション

代表者代表取締役

道前伸洋

訴訟代理人弁護士

品川澄雄

滝澤功治

主文

特許庁が昭和59年審判第6988号事件について平成3年4月25日にした審決を取り消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

事実

第1  当事者の求めた裁判

1  原告

主文と同旨の判決

2  被告

「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決

第2  請求の原因

1  特許庁における手続の経緯

被告は、名称を「芯地」とする特許第1099905号の発明(昭和51年12月28日出願、昭和55年10月13日出願公告、昭和57年6月18日設定登録)の特許権者である。原告は、昭和59年4月5日、被告を被請求人として、特許庁に対し、上記発明のうち、特許請求の範囲第1項(必須要件項)及び第2ないし第4項(実施態様項)記載の発明(以下「本件発明」という。)を無効にすることについて審判を請求した。特許庁は、この請求を昭和59年審判第6988号事件として審理した結果、平成3年4月25日、「本件審判の請求は成り立たない。」との審決をした。

2  本件発明の要旨(特許請求の範囲第1項記載と同じ)

所要の編巾一杯にわたり両側端に耳部を形成しながら往復編成してなる弾撥性の強い可撓性合繊モノフイラメント糸1と、該糸層の一面においてウエール方向に配置され、各ウエールより1ウエール飛び以上離れたウエールとの間においてジクザグ状に横に振り、各ウエール間に振り糸の重合により重複部分2’を形成してなる任意の合繊フィラメント糸2と、前記モノフイラメント糸1層に対し前記糸2層と同一面又は他面の少くとも一面において縦方向に挿入してなる適宜数のフイラメント糸3と、前記各糸1、2、3を各ウエールにおいて縦方向に一体に編止めしてなるステッチ糸4とからなることを特徴とする芯地。(別紙図面1参照)

3  審決の理由の要点

(1)  本件発明の要旨は前項記載のとおりである。

(2)  請求人(原告)の主張は次のとおりである。

<1> 本件発明の構成要件である「前記各糸1、2、3を各ウエールにおいて縦方向に一体に編止めしてなるステッチ糸4」とは、縦方向に挿入されるフイラメント糸3が、合繊モノフイラメント糸1及び合繊フイラメント糸2と共にステッチ糸4によって直接一体に編み止めされている、と解されるが、本件発明の明細書(以下「本件明細書」という。)の発明の詳細な説明及び図面からは、ステッチ糸4によって一体に編み止めされている糸は、合繊モノフイラメント糸1と、合繊フイラメント糸2のみであって、縦方向に挿入されるフイラメント糸3はステッチ糸4によって一体に編み止めされておらず、合繊モノフイラメント糸1と、合繊フイラメント糸2との間に単に縦方向に挿入されているにすぎない。

したがって、本件明細書には、「縦方向に挿入されるフイラメント糸3が合繊モノフイラメント糸1及び合繊フイラメント糸2と共にステッチ糸4によって一体に編み止めされる」との技術は開示がなく、本件明細書には当業者が容易に実施できる程度に発明の構成が記載されていないか、又は、特許請求の範囲に、発明の詳細な説明に記載した発明の構成に欠くことができない事項のみが記載されていないので、本件明細書は特許法36条3項又は4項(昭和60年法律第41号によるもの)に規定する要件を満たしていない。

<2> 本件発明は、本件発明の出願に対する先願である甲第3号証(本3項の書証番号は審決の理由中に表示のものである。)の発明中に内在しており、甲第6号証を勘案すると同一である。

(3)  そこで、これらの主張について検討する。

<1> <1>の主張について

(a) 本件発明の構成要件である「前記各糸1、2、3を各ウエールにおいて縦方向に一体に編止めしてなるステッチ糸4」において「各ウエール」とはステッチ糸4の位置を示し、「縦方向に」とはステッチ糸4の編成の方向を示すものと認められる。また、「編止め」とは、本件明細書の発明の詳細な説明に「4は前記マルチフイラメント糸2による横振り層を合繊モノフイラメント糸1層の一面に編み止めする通常、鎖編の如き経編目からなるステッチで前記モノフイラメント糸1及びマルチフイラメント糸2を横振りするとき、一緒に別の編糸を編み込み編成する。この編目4は通常のトリコット編目等を以て代替せしめてもよい。」(本件特許公報第5欄32行ないし37行)と記載され、ステッチ糸4によって他の糸を編み込んで止めることをいうものと解される。

(b) そして、図面には、フイラメント糸3がウエールとウエールの間で合繊モノフイラメント糸1と合繊フイラメント糸2の間に挿入されている構成が図示されていることからみて、「前記各糸1、2、3を各ウエールにおいて縦方向に一体に編み止めしてなるステッチ糸4」とはステッチ糸4がその編目において合繊モノフイラメント糸1と合繊フイラメント糸2を編み込むことによって間接的に糸3を止めて各糸1、2、3を一体となした構成を含むものと解される。

(c) 「JIS用語辞典Ⅵ繊維編」(甲第1号証)にはウエールの語の意味が記載されている。

実願昭51-77915号(実開昭52-168602号)の願書に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフイルム(甲第3号証)には、本件発明の芯地と似た編組織を有する芯地が記載され、本件発明における縦糸挿入糸3に相当する加工糸1の挿入箇所を示す表現として「ウエール間又はウエールに挿入されてなり」と記載され、「ウエール間」と「ウエール」とは別の箇所を示すものとして表現されている。

(株)繊維技術ジャーナル社・昭和49年9月15日発行の「ラッシェル・トリコット 経編技術問題集」(甲第4号証)の第35頁には、「下図の挿入糸(ニ)は(イ)(ハ)によって作られる編地の表面に(ロ)の鎖編によってその横振りの両端を止められている」と記載され、上記(ロ)の鎖編がその編目によって直接他の糸(ニ)、(イ)、(ハ)を止める態様を示す図が示されている。

被請求人(被告)の本件発明と関連した発明の出願である実願昭52-22800号(実開昭53-117302号)の願書に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフイルム(甲第5号証)には、「第1図乃至第3図は・・・各層を鎖編の如き経編目からなる連続ステッチ(4)で編止めし一体となした帯状布(1)の構成が示されている。なお、図では更に長手方向に亘り他のフイラメント糸5が各ゲージ間に挿入されている。」(第2頁19行ないし第3頁11行)と記載され、各層(各糸に相当)を鎖編の如き経編目からなる連続ステッチ4で直接編止めして一体となし、挿入糸は連続ステッチ4の編目に編み込まれていない図が示され、被請求人は甲第5号証の出願においては、「一体に編止める」と単なる「挿入」とを区別して記載している。

(d) しかし、いずれも、「編止め」の語義を定義したものではなく、「一体に編止めして」の一態様として「直接一体に編止められている」構成のものがある、というにとどまり「一体に編止めして」の文言を請求人主張のように解釈すべきとは、甲第1号証及び甲第3ないし第5号証からはいえない。

また、福井県技術アドバイザーである稲葉薫治による回答書(甲第13号証)は、稲葉薫治の見解が示されているにすぎず、これが、この技術分野において絶対的なものであるとまではいえないから、「一体に編止めして」の文言を請求人主張のように解釈すべきとの証拠にはならない。

確かに、本件明細書の特許請求の範囲の記載には、不明確な部分は存在するが、発明の詳細な説明及び図面を参酌して本件発明の構成要件の正しい意味を確定することができるから、この不備は特許法36条3項又は4項に違反する不備とまではいえない。

<2> <2>の主張について

本件発明の出願に対して先願に当たる実願昭51-77915号の明細書(甲第3号証)には、本件発明の構成要件である「各ウエールより1ウエール飛び以上離れたウェールとの間においてジクザグ状に横に振り、各ウエール間に振り糸の重合により重複部分2’を形成」するという構成は記載されていない。したがって、甲第6号証を勘案するまでもなく本件発明は、芯地の編組織自体が甲第3号証の発明と相違し、同一とはいえない。

また、甲第2号証及び甲第7ないし第12号証は、本件とは直接関係なく、本件発明を無効とすべく証拠として採用しない。

4  審決を取り消すべき事由

審決の理由の要点(1)、(2)は認める。同(3)<1>(a)のうち、「各ウエールとはステッチ糸4の位置を示し」との部分は争い、その余は認める。同(b)は争う。同(c)は認める。同(d)は争う。同(3)<2>は争う。

(1)  取消事由(1)一本件明細書は特許法36条3項又は4項に違反していないとした判断の誤り

<1> 本件発明に係る特許請求の範囲第1項記載中の「前記各糸1、2、3を各ウエールにおいて縦方向に一体に編止めしてなるステッチ糸4」との構成要件(以下「構成要件A」という。)は、「各糸1、2、3をステッチ糸4によって形成される編目列(ウエール)において、直接的に一体に編み止める」ことを意味するものであることは、構成要件Aの記載自体から一義的に明らかである。しかるに審決は、わざわざ図面を参酌して、構成要件Aについて、「ステッチ糸4がその編目において合繊モノフイラメント糸1と合繊フイラメント糸2を編み込むことによって間接的に糸3を止めて各糸1、2、3を一体となした構成を含むものと解される。」と認定判断している。

しかし、特許請求の範囲の記載が一義的に明確であって、その記載により当該発明の技術内容を的確に把握することができるにもかかわらず、その記載を無視し、明細書の発明の詳細な説明や図面に基づいて特許請求の範囲の記載事項を解釈することは許されないのであって、審決の上記認定判断は違法であり、本件発明の技術内容の把握を誤ったものというべきである。

上記のとおり、構成要件Aの趣旨は、「各糸1、2、3をステッチ糸4によって形成される編目列(ウエール)において、直接的に一体に編み止める」というものであるが、他方、特許請求の範囲第1項の発明に係る唯一の実施例として、発明の詳細な説明に図面と共に具体的に開示されている技術は、合繊モノフイラメント糸1(以下「糸1」と略称することがある。)と合繊フイラメント糸2(以下「糸2」と略称することがある。)がステッチ糸4で各ウエールにおいて一体に編み止められ、フイラメント糸3(以下「糸3」と略称することがある。)はステッチ糸4によって一体に編み止めされておらず、ウエール間において糸1と糸2の間に単に縦方向に挿入されているにすぎない。

上記のとおり、糸3の配設構造に関して、特許請求の範囲の記載と実施例とは完全に齟齬していて、本件明細書には、「縦方向に挿入されるフイラメント糸3が合繊モノフイラメント糸1及び合繊フイラメント糸2と共にステッチ糸4によって一体に編み止めされる」との技術についての開示がないから、本件明細書は特許法36条3項又は4項に規定する要件を満たしていないものというべきである。

したがって、本件明細書に上記規定に違反する不備はないとした審決の判断は誤りである。

<2> 被告は、構成要件A中の「編止め」なる用語は、この分野の技術用語としてその意味内容が一義的に確定しているとはいい難い旨主張するが、「編止め」とは文字どおり編み込んで止めることであって、多義的なものではない。しかも、本件の場合、「ステッチ糸4によって各糸1、2、3を各ウエールにおいて一体に編み止める」のであるから、糸3を糸1、糸2と同様に各ウエール(ステッチ糸4によって形成される編目列)において、すなわち、ステッチ糸4によって一体に編み止める趣旨であることは歴然としているのであるから、被告の上記主張は理由がない。

また、被告は、「各ウエールにおいて」とはステッチ糸4の位置を示している旨主張する。しかし、吉川和志著・「新しい繊維の知識」(甲第10号証)の「鎖編」の項(第61頁)に「1本の編糸が、ただ一つのウエール方向に編み進むもので」と説明されているとおり、ステッチ糸4自体がウエール(縦方向の編目列)を形成する糸を指す用語であるから、特許請求の範囲に「各ウエールにおいて」と記載して「ステッチ糸4の位置」をわざわざ示す必要はないし、本件発明を構成する糸のうちウエールを形成する糸はステッチ糸4しかない以上、ステッチ糸4の位置を「各ウエールにおいて」と表現する必要は全くないのである。「各ウエールにおいて」とは、各糸1、2、3を一体に編み止めする位置を示していることは明らかであって被告の上記主張は理由がない。

(2)  取消事由(2)一本件発明は、芯地の編組織自体が甲第3号証(本訴における甲第7号証)の発明と相違し、同一とはいえないとした判断の誤り

<1> 本件発明の構成要件である「各ウエールより1ウエール飛び以上離れたウエールとの間においてジグザグ状に横K振り、各ウエール間に振り糸の重合により重複部分2’を形成」するという構成(以下「構成要件B」という。)は本件発明の出願に対して先願に当たる実願昭51-77915号考案(実開昭52-168602号)の願書に最初に添付した明細書(本訴における甲第7号証。以下、上記考案を「先願考案」といい、上記明細書を「先願明細書」という。)の実用新案登録請求の範囲中の「編目形成糸及び挿入糸により形成された基布」なる表現に内在し、実質的に記載されているから、先願明細書には構成要件Bは記載されていないとした審決の判断は誤りである。

(a) 本件発明における合繊モノフイラメント糸1、合繊フイラメント糸2、フイラメント糸3、ステッチ糸4は、先願考案における非伸縮性モノフイラメント糸(緯糸2)、挿入糸4、4’、4″、経糸1、編目形成糸3にそれぞれ相当するが、本件発明と先願考案はいずれも、ステッチ糸4・編目形成糸3と合繊フイラメント糸2・挿入糸4、4’、4″とにより形成された基布に、弾撥性の強い合繊モノフイラメント糸1・非伸縮性モノフイラメント糸(緯糸2)をインレイ・ステッチとしてステッチ糸4・編目形成糸3の編目に編み込み、かつ、フイラメント糸3・経糸1(ポリウレタン等の伸縮性糸)をブラインド・ラップ・ステッチとして経方向に真っ直ぐに編み込んでなるもので、編組織として当業者がみれば、正に同一の編組織なのである。

(b) 本件発明においては、編目形成糸(ステッチ糸4)と挿入糸(合繊フイラメント糸2)からなる基布において、特に挿入糸(合繊フイラメント糸2)を各ウエールより1ウエール飛び以上離れたウエールとの間においてジグザグ状に横に振り、各ウエール間に振り糸の重合により重複部分2’を形成する旨限定しているが、本件明細書には、この限定による作用効果については一切記載されていない。これは、基布に厚みが要求される場合、振り糸(緯方向挿入糸)をアンダーラッピング(重合)せしめることは、当業者の常識であるので効果として記載するまでもないからである。

本件発明の上記編組織は、先願考案の実用新案登録請求の範囲に記載の「編目形成糸及び挿入糸により形成された基布」なる上位概念中に含まれる常識的な一態様にすぎないのである。

(c) 先願考案の図面及び考案の詳細な説明には、振り糸をアンダーラッピングして振り糸の重合による重複部分を形成する例が具体的には示されていないが、実用新案登録請求の範囲は、「編目形成糸及び挿入糸により形成された基布」なる上位概念記載となっており、「編目形成糸及び挿入糸により形成される基布」として、甲第10号証ないし第13号証に示すとおり、デンビー編(相隣接するウエール間をジグザグ状に横に振る緯方向挿入糸の編組織)、及びプレンコード編(1ウエール飛び以上離れたウエール間をジグザグ状に横に振る緯方向挿入糸の編組織)と、鎖編との組合わせがいずれも周知であり、生地に厚みが要求されない場合は振り糸を重合させないデンビー編とし、生地に厚みが要求される場合は振り糸を重合せしめるプレンコード編とすることは当業者の常識的な選択事項である以上「編目形成糸及び挿入糸により形成された基布」なる上位概念中に、上記鎖編(編目形成糸)とプレンコード編(1ウエール飛び以上離れたウエール間をジグザグに横に振る緯方向挿入糸の編組織)との組合わせからなる本件発明の上記構成要件に示された基布が含まれることは明らかである。

<2> 被告は、本件発明と先願考案とは、用途及び構成糸が相違する旨、及び本件発明の芯地は、「適度の柔軟性」、「長手方向伸縮性」、「復元性」、「保形性」「体形に即したフィット性」、「外めくれ防止性」、「彎曲反り形状が可能なこと」「弾撥性」といった芯地として好適な種々の効果をもたらすことのできる編組織を有しているが、このような諸特性は先願明細書に示されているような伸縮性糸を用いた場合には達成し得ない旨主張する。

しかし、先願考案の編組織に用いられている経糸挿入糸は、実用新案登録請求の範囲に記載のとおり、「ポリウレタン等の伸縮性糸」であって、編組織特有の伸縮性を若干助長する程度の伸縮性芯地を含むものであり、糸3の説明として、本件明細書に記載されている「なお、伸縮性糸を用いて伸縮性のある被服の芯材としてスィット性を高めることも可能である。」(甲第2号証第5欄30行、31行)の「伸縮性糸」と何ら変わるものではないこと、被告の主張する上記特性のうち「体形に即したフィット性」、「外めくれ防止性」は特許請求の範囲第1項の構成によってもたらされる特性ではなく、その余のものは先願考案の芯地も当然有する特性であることからして、被告の上記主張は理由がない。

また、被告は、本件発明において構成要件Bを採択したことによる作用効果を主張しているが、本件明細書には、同構成要件によってもたらされる作用効果については一切記載がなく、上記主張は明細書の記載に基づかないものであって失当である。

第3  請求の原因に対する認否及び反論

1  請求の原因1ないし3は認める。同4は争う。

2  反論

(1)  取消事由(1)について

構成要件Aは、その記載自体から一義的に明確であるとはいい難い。なぜならば、構成要件Aにおける「一体に編止める」という要件は、構成要件Aの意味を確定する上において必須の要件であるが、「編止め」なる用語は、この分野における技術用語としてその意味内容が一義的に確定しているとは必ずしもいい難いからである。

したがって、審決が、その意味内容を確定するために、本件明細書の発明の詳細な説明や図面を参酌して構成要件Aの技術内容を把握したことに何ら違法はない。

ところで、本件明細書の発明の詳細な説明には、「4は前記マルチフイラメント糸2による横振り層を合繊モノフイラメント糸層の一面に編み止めする通常、鎖編の如き経編目からなるステッチで、前記モノフイラメント糸1及びマルチフイラメント糸2を横振りするとき、一緒に別の編糸を編み込み編成する。」(甲第2号証第5欄32行ないし37行)と記載されており、この記載に従えば、「編止め」する主体は「ステッチ糸4」であって、フイラメント糸3はモノフイラメント糸1及びマルチフイラメント糸2を横振りするとき、「一緒に編み込」まれれば足りるのであって、フイラメント糸3の位置は、原告が主張するように各ウエール上である必要はなく、ウエールとウエールの間であってもよいわけである。

構成要件Aにおける「各ウエールにおいて」とはステッチ糸4の位置を示し、「縦方向に」とはステッチ糸4の編成の方向を示し、「一体に編止めしてなる」とはステッチ糸4の編成の態様を示しているということができるのである。

フイラメント糸3について、特許請求の範囲には「前記モノフイラメント糸1層に対し前記糸2層と同一面又は他面の少くとも一面において縦方向に挿入してなる適宜数のフイラメント糸3」と記載されているが、フイラメント糸3の配設の態様として、ウエール上においては糸1層と糸2層の間に挿入及び2つの層の外側に配設、ウエール間においては糸1層と糸2層の間に挿入の3つの場合が考えられる。

本件発明の図面第1図、第2図は、経挿入糸であるフイラメント糸3の配設態様の上記3つの場合のうちのウエール間に挿入された場合のものであるが、ステッチ糸4が「各ウエールにおいて縦方向に」編成されることによってモノフイラメント糸1によって形成される層と合繊フイラメント糸2によって編成される層とを編み合わすと、モノフイラメント糸1層と合繊フイラメント糸2層が緊締され、それによってウエールの中間に配設されたフイラメント糸3が上下から挟まれてその中間に綴じこめられ緊締されて、フイラメント糸3はモノフイラメント糸1と合繊フイラメント糸2と共に一体に、すなわち各糸1、2、3がそれぞれ別々に編み止められるのではなくて、各糸全部がステッチ糸4の編成により一体に編み止められるのである。

以上のとおりであって、本件発明における糸3の配設構造に関して、特許請求の範囲の記載と実施例とはいささかも齟齬していないから、取消事由(1)は理由がない。

(2)  取消事由(2)について

<1> 先願考案は、実用新案登録請求の範囲にも「ポリウレタン等の伸縮性糸が上下を緯方向の挿入糸により押えられて、ウエール間またはウエールに挿通されてなり、」と記載されているとおり、伸縮性を有する衣料用芯地に関する考案であり、考案の詳細な説明には「本考案は衣料用芯地に関するものであり、芯地に必要な腰の強さおよびベルト等に使用するために必要な長手方向の伸縮性を有し、かつ耳部が柔軟性を持つ衣料用芯地を提供せんとするものである。」(甲第7号証第1頁15行ないし19行)、「伸縮性糸としてはポリウレタン等のナイロンカバーリング糸を配列してなり、」(同第2頁2行ないし4行)、「長手方向に伸びる編目形成糸3に対してそのウエール間に経糸1としてポリウレタン等の伸縮性糸とナイロン等加工糸が併用して用いられ、」(同第3頁12行ないし14行)と記載され、先願考案の芯地は伸縮性に富むものであることが示されている。すなわち、先願考案の芯地は、経(縦)糸に極めて伸縮性に富むゴムに似た伸縮性糸を用いた編組織の芯地であって、緯(横)糸に用いられる非伸縮性のモノフイラメント糸が、芯地が引き伸ばされてその幅が細くなった場合、生地の側縁から突出してくるのを防ぐために柔軟性のある挿入糸で耳部を両側縁に設け、側縁を被覆するという構成の編組織である。

一方、本件発明の芯地は、このような伸縮性のある糸を構成糸として用いず、したがって、ゴムに似た長手方向に伸縮性を有する芯地とは異なり、スラックスやスカートにベルトとして用いられる芯地なのである。すなわち、非伸縮性の生地を用いた非伸縮性ベルト芯である。

さらに、先願考案は構成要件Bを具備していないのである。

このように、本件発明と先願考案は、用途、構成糸及び編組織のいずれもが相違している。

この点に関して、原告は、本件明細書には糸3の説明として、「なお、伸縮性糸を用いて伸縮性のある被服の芯材としてフィット性を高めることも可能である。」(甲第2号証第5欄30行、31行)と記載されているから、本件発明の芯地を構成する糸3は非伸縮性の糸のみではなく伸縮性の糸をも含み、その点において伸縮性糸を用いた先願考案の芯地と区別はない旨主張している。

しかし、本件明細書の発明の詳細な説明には、本件発明の芯地の特徴として、「本発明は・・・、適度の柔軟性と長手方向伸縮性ならびに復元性を有すると共に、体形に即したフィット性があり、かつ保形性に優れ、外めくれ防止に顕著な効果を有する芯地を提供することを目的とする」(甲第2号証第3欄37行ないし41行)、「又、本発明の他の特徴は、前記任意の合繊モノフイラメント糸に基層を形成するモノフイラメント糸より熱収縮性が大なる糸を使用して熱加工処理により収縮させて芯地に彎曲反り形状を与え、復元力を増大せしめることである。又、経方向に配列されるフイラメント糸にモノフイラメント糸を用いることにより保形性を高め、弾撥性を向上せしめること、並びに該フイラメント糸に熱収縮率の差を設け、全巾に亘り一側より順次熱収縮の異なる経糸群に区分せしめ、爾後の熱処理により扇形弧状に形成させ、体形に即した良好なフィット性を有せしめることも本発明の特徴である。」(同第4欄21行ないし33行)と記載されているように、本件発明の芯地は「適度の柔軟性」、「長手方向伸縮性」、「復元性」、「保形性」「体形に即したフィット性」、「外めくれ防止性」、「彎曲反り形状が可能なこと」「弾撥性」といった芯地として好適な種々の効果をもたらすことのできる編組織を有しているのであって、本件発明の芯地のこのような諸特性が、先願明細書に示されているような伸縮性糸を用いた場合に達成し得ないことは明らかである。上記「なお、伸縮性糸を用いて伸縮性のある被服の芯材としてフィット性を高めることも可能である。」との記載は、合繊糸の技術水準の向上によって従来の非伸縮性糸にも若干の伸縮性が与えられる場合が生じてきたので、このような非伸縮性糸をも排除するものでないことを明白にするために挿入されたものである。

<2> 原告は、構成要件Bは先願考案の実用新案登録請求の範囲中の「編目形成糸及び挿入糸により形成された基布」なる表現に内在し、実質的に記載されている旨主張する。

しかし、上記のとおり、本件発明と先願考案は、用途、構成糸及び編組織のいずれもが相違しているし、構成要件Bについては、先願明細書の実用新案登録請求の範囲及び考案の詳細な説明には記載はもとより示唆もなく、また図面にも図示されていないのであるから、原告の上記主張は理由がない。

また、原告は、横振りの糸を各ウエールより1ウエール飛び以上離れたウエールに横振りすることは当業者の常識的な選択事項である旨主張する。

しかし、本件発明は、非伸縮性のベルト用芯地に係るものであり、糸2を1ウエール飛び以上離れたウエール間にジグザグ状に横に振ることによって、芯地に適当な密度を作ると共に、糸2の左右でルーピングして目ずれを防止し、また、ウエール間に糸2の重複部分2’を形成させ人体側への彎曲力を強化しスムースに彎曲させる作用効果を奏しているものであるから、構成要件Bを採択することが当業者の常識的な選択事項とはいえないのであって、原告の上記主張は理由がない。

以上のとおりであって、取消事由(2)は理由がない。

第4  証拠

証拠関係は、書証目録記載のとおりである(理由中において引用する書証の成立は、いずれも当事者間に争いがない。)。

理由

1  請求の原因1ないし3の事実は当事者間に争いがない。

2  取消事由(1)について

(1)<1>  本件発明の特許請求の範囲第1項は前示要旨記載のとおりであり、本件発明に係る芯地を構成する各糸を編組織、配置位置、材質等により規定することによって、編物からなる芯地の構成を特定するものであって、このような規定の体裁及び構成要件Aの文脈に照らすと、構成要件Aにおける「各ウエールにおいて」、すなわち縦方向の編目列(甲第6号証)がステッチ糸4の位置を示しているものと解することは格別不自然なことではないものと認められる。そして、構成要件Aにおける「縦方向に」とはステッチ糸4の編成の方向を示すものであり、「編止め」とはステッチ糸4によって他の糸を編み込んで止めることをいうものと解されることは、当事者間に争いがない。

ところで、特許請求の範囲第1項には、フイラメント糸3について、「前記モノフイラメント糸1層に対し前記糸層2と同一面又は他面の少くとも一面において縦方向に挿入してなる適宜数のフイラメント3」と記載されていて、フイラメント糸3の、編生地における前後方向の配置位置と縦方向への挿入については規定しているが、巾方向の配置位置については規定していない。

上記のように、構成要件Aにおける「各ウエールにおいて」は、文理上ステッチ糸4の位置を示しているものと解し得ること、フイラメント糸3について記載した上記構成要件は、同糸の巾方向の配置位置について規定しておらず、同糸の挿入位置がウエールにある場合とウエール間にある場合を予定しているものと解されること、「編止め」とは縦方向に配置されたステッチ糸4によって他の糸を編み込んで止めることを意味するもののほか、「編止め」の態様が単に「一体に」と規定されているだけで、それが直接的であるか間接的であるかについて何ら限定が付せられていないことを前提として、構成要件Aの記載をみたとき、同構成要件は、(a)糸3の挿入位置がウエールにある場合には、糸1、2、3を縦方向に配設したステッチ糸4によって直接的に一体に編止めする構成のほか、(b)糸3の挿入位置がウエール間にある場合には、糸1、2を縦方向に配設したステッチ糸4により直接的に一体に編止めすることによって、糸3を間接的に一体に編止めする構成を含むものと解釈することができる。この解釈は上記のように、構成要件Aの記載から導くことができるのであって、この(b)の構成が本件特許公報である甲第2号証に本件発明の実施例として記載されているものと認めることができる。

したがって、構成要件Aが「ステッチ糸4がその編目において合繊モノフイラメント糸1と合繊フイラメント糸2を編み込むことによって間接的に糸3を止めて、各糸1、2、3を一体とした構成を含む」とした審決の判断は、結論において誤りということはできない。

<2>  この点に関して原告は、構成要件Aが上記構成のうち(b)を含むことを争うが、前記のように、糸3の挿入位置について巾方向に限定がないのであるから、挿入位置がウエール間にある場合には、糸1、2、3を糸4により一体として直接的に編止めすることができないことは技術的に明らかである。しかし、この場合は、糸1、2を糸4により一体として直接的に編止めすることによって間接的に編止めし、結局糸4によって糸1、2、3を編み込んでいる状態を実現することができる。すなわち、糸3の挿入位置がウエール間にある場合には、(b)の構成によるほかないのであり、構成要件Aがこの構成を排除しているものと認めるべき事由は見い出し得ない。

また、原告は、ステッチ糸4自体がウエール(縦方向の編目列)を形成する糸を指す用語であるから、特許請求の範囲に「各ウエールにおいて」と記載して「ステッチ糸4の位置」をわざわざ示す必要はないし、本件発明を構成する糸のうちウエールを形成する糸はステッチ糸4しかない以上、ステッチ糸4の位置を「各ウエールにおいて」と表現する必要は全くないのであって、「各ウエールにおいて」とは各糸1、2、3を一体に編み止めする位置を示していることは明らかである旨主張するので検討する。

甲第10号証によれば、吉川和志著・「新しい繊維の知識」(昭和49年8月1日初版発行)の第61頁「鎖編」の項には、「1本の編糸が、ただ一つのウエール方向に編み進むもので」と記載されていることが認められ、この記載によれば、ステッチ糸自体がウエール(縦方向の編目列)を形成する糸を指す用語として使われることもあるものと認められなくはない。

しかし、甲第2号証(本件特許公報)によれば、本件明細書の発明の詳細な説明には、「ステッチ糸4」に関連して、「各ウエール毎に経編目ステッチで編み止めして」(甲第2号証第4欄15行)、「4は前記マルチフイラメント糸2による横振り層を合繊モノフイラメント糸1層の一面に編み止めする通常、鎖編の如き経編目からなるステッチで前記モノフイラメント糸1及びマルチフイラメント糸2を横振りするとき、一緒に別の編糸を編み込み編成する。この編目4は通常のトリコット編目等を以て代替せしめてもよい。」(同第5欄32行ないし38行、この記載があることは当事者間に争いがない。)、「ステッチ4'を編成する糸」(同第5欄40行、41行)と記載されていることが認められ、これらの記載によれば、本件明細書において、「ステッチ」は「編目」の意味に、「ステッチ糸」は「編目を編成する糸」の意味にそれぞれ用いられているものと認められるが、それ以上に、「ステッチ糸4」自体がその位置や編成方向をも明らかにするものとして用いられているとは認め難い。

そうすると、構成要件Aは、「ウエールにおいて縦方向に」という表現を用いることによって、ステッチ糸4はすべてのウエールの位置にあり、その編成の方向は縦方向であることをより明確にしているものと考えられ、その意味で「各ウエールにおいて」なる表現を用いた必要性は否定できないのであって、原告の上記主張は採用できない。

なお、原告会社の福井県技術アドバイザー稲葉薫治に対する質問書に対する同人の回答書(甲第15号証)には、原告の主張に副う記載があるが、叙上説示したところに照らし採用することができない。

(2)  以上のとおりであるから、糸3の配設構造に関して、特許請求の範囲の記載と実施例との間には、原告主張のような齟齬はないものというべきである。

したがって、上記齟齬があることを前提とする取消事由(1)は理由がない。

3  取消事由(2)について

(1)  甲第7号証によれば、先願明細書の実用新案登録請求の範囲には、「編目形成糸及び挿入糸により形成された基布に対し、非伸縮性モノフイラメント糸が編幅の両耳に於ける少なくとも1ウエールずつ分離した他のウエールに対し緯方向に往復挿入されてなり、ポリウレタン等の伸縮性糸が上下を緯方向の挿入糸により押えられて、ウエール間又はウエールに挿通されてなり、耳部のウエールが非伸縮性モノフイラメント糸の耳端の突出部を被覆するように耳部を形成していることを特徴とする衣料用芯地。」と記載され、先願考案に係る実施例の編成組織図である第4図、第5図、第6図には、挿入糸4’が相隣接するウエール間をジグザク状に横に振られた編組織が図示されており(別紙図面2参照)、考案の詳細な説明には、挿入糸4’に関して、「4’は生地中央を連結するための挿入糸であって・・・各ウエールを連結する。」(甲第7号証第5頁5行ないし8行)、「1は経糸であり・・・ウエール間に挿入糸4又は4’に上下を押さえられて経方向に挿入されてなる。」(同頁11行ないし13行)、「4’は生地中央部連結のための挿入糸であり、・・・各々ウエールを連結する。」(同第6頁4行ないし6行)、「4’は生地中央部連結のための挿入糸であり、・・・各ウエールを連結する。」(同第7頁3行ないし5行)と記載されていることが認められる。

上記認定の事実によれば、先願考案の明細書及び図面に具体的に開示されている挿入糸の編組織はいわゆるデンビー編(緯方向挿入糸の編組織として、糸を相隣接するウエール間をジグザグ状に横に振るものをデンビー編と称することは、前掲甲第10号証により認める。)であると認められる。

他方、ステッチ糸4(先願考案の編目形成糸に相当する。)と合繊フイラメント糸2(同じく挿入糸に相当する。)からなる本件発明の基布において、合繊フイラメント糸2の編組織は、「各ウエールより1ウエール飛び以上離れたウエールとの間においてジグザグ状に横に振り、各ウエール間に振り糸の重合により重複部分2’を形成」するという構成(構成要件B。前掲甲第10号証によれば、このような編組織をプレンコード編と称することが認められる。)であるが、先願明細書及び図面には、このような編組織についての明示的な記載はない(このことは、原告において自認するところである。)。

しかし、先願考案の実用新案登録請求の範囲においては、基布の形成に関して、上記のとおり「編目形成糸及び挿入糸により形成された基布」とのみ規定し、基布を形成する挿入糸の振り方、すなわち挿入糸の編組織について特定のものに限定しているものではないこと、前掲甲第10号証、甲第12号証(昭和2年実用新案出願公告第8712号公報)及び第13号証(実開昭48-49371号公報)によれば、デンビー編及びプレンコード編はいずれも先願考案の出願当時周知の編組織であったことが認められること、これらの編組織の態様からして、要求される生地の厚さ等を考慮していずれの編組織を選択するかは当業者において適宜選択し得る事項と考えられること、先願考案の挿入糸もウエール間又はウエールに挿通された糸の上下を押さえるものであるから、挿入糸の編組織として、デンビー編と同様にプレンコード編が適用できることは当業者において容易に理解し得ることと認められること、先願考案において、挿入糸の編組織としてプレンコード編を選択することを積極的に排除しなければならない特段の事由は認められないことを総合すると、本件発明の構成要件Bは、先願考案の実用新案登録請求の範囲中の「編目形成糸及び挿入糸により形成された基布」なる構成に含まれるものであって、上記記載に実質的に記載されているものと認めるのが相当である。

したがって、先願明細書には構成要件Bが記載されていないことを前提として、本件発明は、芯地の編組織自体が甲第7号証の発明(先願考案)と相違し、同一とはいえないとした審決の判断は誤りである。

(2)  被告は、本件発明と先願考案とは、その芯地の特性・用途、芯地全体の構成、芯地の伸縮性、構成糸の材質、ならびに作用効果が相違していることなどを持ち出して、審決の判断に誤りがないことを主張するもののようであるが、審決の理由の要点から明らかなとおり、審決が原告の主張<2>について判断していることは、本件発明における合繊フイラメント糸2の編組織である構成要件Bが先願明細書に記載されているか否かということであり、したがって、本訴において問題とすべきことも審決の上記判断の当否に尽きるのであるから、被告の主張はその前提において失当というべきである。

また、被告は、本件発明は構成要件Bにより、芯地に適当な密度を作ると共に、糸2の左右でルーピングして目ずれを防止し、また人体側への彎曲力を強化しスムーズに彎曲させる作用効果を奏しているから、構成要件Bを採択することは当業者が適宜選択し得る事項ではない旨主張する。

しかし、本件明細書には、構成要件Bを採択したことにより上記のような作用効果を奏する旨の記載はないし、芯地に適当な密度を作るためにプレンコード編を選択する程度のことは前記のとおり当業者において適宜選択し得る事項と認められるから、上記主張は採用できない。

(3)  以上のとおりであって、取消事由(2)は理由がある。

4  よって、原告の本訴請求は理由があるから認容し、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条、民事訴訟法89条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 松野嘉貞 裁判官 濵崎浩一 裁判官 押切瞳)

別紙図面1

<省略>

別紙図面2

<省略>

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